装飾古墳ファンには絶対はずせない古墳です。飛鳥で高松塚やキトラを観たならば、ここ竹原も観なくては!
竹原古墳の装飾は、ひと目で海の向こうの文化とわかる独特の世界です。北朝鮮の世界遺産・高句麗壁画を彷彿とさせるものです。
竹原古墳(国史跡)は、王塚古墳(国特別史跡)と近い所にあります。破格にすごい2つの装飾古墳が近くにあるとは、このエリアの古代は一体どんな場所だったのでしょうか。
石室の装飾は幾何学文様でなく絵画です。東西南北の四神(青龍・白虎・朱雀・玄武)、貴人の日よけに用いる翳(さしば)、馬をひく人物の膨らんだズボンやとがった靴、不思議な姿の龍。
誰がそれを見たのか、
誰がそれを知っていたのか、
誰がそれらをここに描いたのか…。
口から火を吐き体に赤い斑点をまとう龍は、四神の青龍とも、かの地の龍媒伝説とも、諸説あります。
高句麗(紀元前1世紀~7世紀)は、現在の中国東北部から北朝鮮、韓国の北部までの広大な勢力を誇りました。建国の王はドラマが大流行した「朱蒙(チュモン)」。九州には高句麗の匂いがする遺跡が数多くありますが、ここ竹原古墳の絵は最たるもののひとつです。
高句麗が残した装飾壁画は世界文化遺産です。遷都した高句麗3つの都、現在の中国の桓仁(かんじん)・集安(しゅうあん)と北朝鮮の平壌近郊に集中しています。王族の絵や女子群像や四神図や狩りの様子など、様々な見事な絵は、古代史好きなら誰もが一度は観たいと憧れるもの。
それらとあまりに似ている竹原古墳の絵。
そのことが何を意味しているのでしょうか。
九州の豪族と行き来があったのか、
情報が伝わってきたのか、
人が渡来してきたのか。
川や海や船や人というピースを紡ぐと様々に想像が膨らみます。
古代史ファンに有名なこの竹原古墳は、なんと、いつでも本物を見学できるという希少な装飾古墳です。ガラス越しにこの絵と向きあってみてください。千数百年を経て放ち続ける、底知れぬオーラを感じるはずです。双眼鏡をぜひご持参のほど。
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装飾古墳王国・九州の、
竹原(たけはら)古墳。(福岡県宮若市)
*現地事務所へ申請して鍵を開けていただきます。時間やルールをよくご確認ください
*装飾古墳の環境管理(湿度や光)は、劣化をさけて後代へ引き継ぐため。現地では許された範囲で見学を。
*壁画写真は、竹原古墳公式パンフレット(宮若市教育委員会)より
【写真コーナー】—————-
奥壁の神秘的な絵は今も驚くほど鮮やか。大陸的な人物、騎馬、船、さしば。
ガラスの小窓を通して見学できる。手前壁面、右は朱雀、左は玄武
小さな墳丘を登ると見学施設
登ったところには小さな神社
火を吐く姿、とがった爪、赤い斑点。四神の青龍とも、龍媒伝説とも
大きく膨らむズボンととがった靴。大陸的な服装
翳(さしば)。柄の長い団扇。行列で貴人にさしかける図柄が中国の古墳にはある
竹原古墳と北朝鮮の世界遺産・江西大墓の比較。森貞次郎氏、西谷正氏の資料より
竹原古墳の案内板
竹原古墳パンフレット(若宮市教育委員会)