ふと、
『八月のクリスマス』を観たくなった。
20年以上前に初めて観たときから大好きな映画だった。
当時、韓国語を習っていて、
言葉を聞くことも、街や生活を知ることも、
楽しくて楽しくて、
韓国映画を一体どれだけ観ただろう。
住宅街に小さなビデオ店があって、
品揃えにみえる個性も楽しかった時代。
4~5軒先のレンタルビデオ店に通い詰めた。
ハン・ソッキュが大好きで片っ端から観た。
『八月のクリスマス』は少し異色で、
ハン・ソッキュ映画の中でも
別格に大事な作品になった。
あれから何度か観たけれど、
久しぶりに、観たい、が降りてきた。
「もう、場面も会話も全部覚えてるんだけど…」と思いつつ。
でも、違った。
場面も会話も覚えている通りなのだけど、
沁み方がまったく違った。
亡くなる日へと生きている
一秒一秒が、
ジョンウォンが、
タリムが、
アボジがヨドンセンが、
チングがハルモニが、
すべてのシーンが心に染み入る。
ネギを洗うたらいも、
ガラス越しの陽射しも、
つつましい韓屋の古びた廊下も庭先も。
そして、声。
ハン・ソッキュの声。
こんなに素敵だったっけ。
低くて優しくて安心感があって、
全てを受け入れていて、
全てを包み込むような。
この声、
この笑い声。
これが、この映画だったんだ。
最高に静かで
最高に温かくて
最高に美しい映画。
*
ロケ地は全羅北道の群山です。植民地時代に日本人街だったここは、今も旧日本家屋が残っているそうで、他の映画でもロケ地として見たことがあります。